No.10

『われら天より闇を見る』クリス・ウィタカー
オーディオブックで、数ヶ月かけてこつこつ聴いてました(サブスク怖…)

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以下ネタバレあり #book



これ名ミステリーだって帯がついていたんだけど、ちょっとぴんと来なかった。
すごくよかったです。
ダッチェスが痛々しくてつらくて、彼女が「私は無法者だよ」って言うたびに苦しくなりました。彼女を守ってあげたいおとなたちはみんなこんな気持ちだったんだろう。無法者になんてならなくていい、憧れる必要さえないはずの年齢の少女が、これを言って自分を奮い立たせているのがつらかった。
ほんとうに最悪な状況下にいたダッチェスとロビンだけど、周囲のおとなたちが悪くなかったのがよかった。ちょうど同時期にメルヴィン・バージェスの『ダンデライオン』を読んでいたので(ドラッグに落ちていく少年少女のはなし)、そちら側にいってもおかしくなかったダッチェスが彼女のままいられたのは、彼女の無法者の血だっていうのも皮肉だけどとてもよいと思いました。

ラストはなんとなく読めてたことの種明かしという感じでそんなに驚きはなかったんだけど、別れて生きていくことになったロビンをこっそり見にいくダッチェスの章で涙が止まりませんでした。ダッチェスの「私は無法者だよ」と同じくらい、ロビンに向けて何度も繰り返される「あんたは王子様なんだから」っていう言葉がよかった…無法者と王子様、正反対の闇と光…

箇条書き感想

・ダークが悪い人間じゃないというのがかなり序盤からなぜか読めていて、これは作者の意図なのか?それともほんとうはどんでん返しにしたかったのか?っていうのはちょっと気になった。
・日本語で読んでるとぴんとこないけど、スターという名前は原書だと随所随所ですごく印象的なんじゃないかなって思った(つづりがStarなのかは知らないけど)。ミルトンの「スターズを見るのが趣味だ」がわかりやすいけど、美しい星を眺める場面でかならずスターが浮かんでくるんじゃないかな。
・ずっとそうといえばそうなんだけど、ウォークが最後の最後でただの傍観者だったって言う事実を突きつけられるシーンが無慈悲…って思った。本人もあきらめているけど、ウォークの人生を思うとさびしい。

オーディオブックだとなかなか気になったところを覚えておくってことがむずかしいんだけど、一箇所だけブックマークしていたところがあった。まだ中盤で、ダークがウォークに「教会で君を見かけるが。なにを祈ってるんだ」って聞いて「正しく、ふさわしい終わりだ」って答えるシーンだった。この作品をよくあらわしている言葉だなって思った。

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